1 摂食障害がはじまる

私は、高校生から8年間摂食障害に悩まされていた。

ダイエットしようと思っても、誘惑に負けてしまい、ついつい食べてしまう。
ただ当時は、自分が摂食障害であるとは思いもしなかった。
「痩せたいからお菓子は食べない! でも今日はちょっとだけ……」というのは、誰にでもよくあることだと思ったから。

そのうちに、学校の帰りにお菓子を買い込み、部屋でこっそりと食べるようになった。
「次の日からは食べないようにしよう」と強く決めてもやっぱりお菓子に手が伸びてしまう。

痩せたいのに食べてしまうこの矛盾に、落ち込むばかりだった。ワタシッテ、ダメニンゲンダ……。

高校卒業後、摂食障害がエスカレートする

高校を卒業して親元を離れ、とある専門学校に進学した。
と同時に、摂食障害の症状は悪化の一途をたどる。

学校が終わると必ず近くのスーパーに立ち寄り大量に食べ物を買い込み、その日のうちに全て消費。太ってしまう不安はあったが、食欲を止めることができなかった。

食べた後強烈な後悔の念に襲われた時に、全て吐き出すことを思いつく。その日から、大量に食べたものをトイレで全部吐き出すようになった。

食べて吐くことを覚えてしまったので、食べる量がもっと増えた。酷い時は、2~3時間おきにコンビニやスーパーに行って食料を買い込み、食べて吐くを繰り返した。その時の罪悪感は半端ではない。

「明日は絶対にやめよう」そう強く誓った。でも、その「明日」が来ることはなかった。

「生きている意味がない」

専門学校を卒業した私は、会社の事務員として働き始めた。
社会人になり、環境が変わることで摂食障害も解消されるかと期待したが、1ミリも変わることはなかった。仕事中も食べ物のことばかり考えていた。表向きは涼しい顔をして仕事をしていたけれど、内心は早く帰りたくてウズウズだった。

退社後すぐに帰宅して食べる。そして吐く。
同僚から誘われても断ってばかりいたので、付き合いの悪い人だと思われていただろう。

この頃から、強いストレスを感じるようになる。
仕事はそれなりに頑張っていて、周囲からも信頼されるようになった。
けれども、その裏では心にポッカリと穴が空いたような、虚しさでいっぱいだった。その穴を埋めるように、食べ物を口に入れては、いっときの幸福感に浸る。その幸福感はやがて罪悪感に変わり、トイレに駆け込んでは吐き出していた。

自分の存在や生きる意味が分からなくなり、「私なんて生きていても仕方がない」と、トイレで吐きながら絶望的な気持ちになった。

生きる意味や死にたいことについて、話したって誰も分かってくれるはずがない。
そうした気持ちがますます孤独感を募らせたかもしれない。
朝起きるのがつらくなり、仕事に身が入らず、私は結局会社を辞めて地元に帰った。